心と引きかえに穏やかさを手にする

自分は長らく気性の荒い、瞬間湯沸かし器のボタンを持ったイラチ属性だと思っていた。

26で鬱が急激に悪化して、食事も取れず眠れず、長らく躁鬱だと分からなかった。
高いところから急速で落ち続けるような、火事の真っ只中にいるような不安感が一秒たりとも消えず、眠れない。普通の鬱とは症状が違うといわれる。嘔吐や体の痛み、疲労がひどい。でも派遣であったゆえに休めない。会社が直接の苦ではなかったし、のちに双極とわかったが、その当時は鬱の治療だったので、薬を飲んでも良くならなかった。

もし同じ症状の人がいれば一通り内科の検査を受けられた方が絶対にいい。私は体重もわずかに減るばかり、血液検査の結果に異常がなくなにより不眠があったので鬱と言われて落ち込んだが、とにかく軽い眠薬で眠れるようになった時はホッとしたものだ。

でも鬱のくせに苛立ちが酷く自傷に走る事もあり、自分が何も出来ないクズゆえに死んでしまいたいという絶望感と世界中みんな憎いと相反する(根は一緒だけど)強烈な感情を持て余し、自傷に走った事もある。
もちろん自殺未遂もある。みんな一通り通る道で恥ずかしい気持ちはない。間違ってたって気持ちはあるが。
辛すぎて、頭に血が上り体にいわく言いがたい感情が駆け回る。
それがまた強烈過ぎる。強烈過ぎ、一時解離性障害も併発したほどだ。感情が高みにも低みにも行き過ぎ、鬱にしては行動的過ぎたと思う。いま思えば双極の混合状態だったのだろう。

しかし自分の感情が自分の中で暴れまわり痛めつけられるのは辛かった。しかもゆえがないのだ。PMSと思ってたし、不穏な言い分で誤解を招きかねないが、あまり正当でない理由で人を殺したくなる人は双極性障害を疑っても悪くないと思う。治療して分かった、普通は殺したくならないぞ。

無理に暴れる感情を抑えつけると鼻血が吹き出た。泣いて喚くと少しまし。風呂で水を浴びて何とか頭の血を下げるのだ、自分が異常なのを意識しつつ。これが鬱か?と思いつつ。家族なんて誰も助けてくれない。みんな同じキチガイだから。

笑ってしまうけど本当だ。それほど感情が乱れていたのを思い出せるのも治療が進み、穏やか、というステータスを手にしたため。

普段の生活には良いもんだ。だが、あの強烈な愛憎が無くなったのは、憎しみはともかく愛情がないのはつらい。

心は感情と切り離されて初めて真実の人格を持つものなのか?穏やかではあるがこれが本当の私か?それとも薬が作った虚像か?
明らかに楽だし社会にも受け入れられるがこれが本当に私のためなのか。

治療して辛うじて社会に出られる私は本当に幸運だ。もっとひどい症状の人はいっぱいいるだろう。だけど、薬を飲んで体を痛めて、心を取り上げられてなお社会に無理にいる私は。本当に社会の為ではなく私のためなのか、自問してしまうのだ。